国際交流プログラム

小野美咲(2020年度参加)

JACAC主催の日加学生フォーラムは、例年、日本またはカナダの大学で開催されますが、今回はコロナ禍のため、全てオンラインで行われました。日本側とカナダ側から同じくらいの割合で、あわせて約25名が参加しました。今回のテーマは「コロナ禍における弊害やこれからどのように私たちの生活が変わっていくか」についてでした。普段の授業内でコロナ禍によって深刻化した問題などについて学ぶ機会はありましたが、異なる国の学生と意見を交わすことにより、コロナ禍が大きく変化させた世界や日常について知識を深めたいと思い、フォーラム2021に参加しました。

フォーラム参加前の事前準備

今回はコロナ禍ということもあり、前年のように事前課題としてレポートを課されることはありませんでしたが、カナダと日本の大学や学生たちがコロナ禍において直面している問題を取り上げた学術論文や新聞記事などを、事前準備として15部ほど読むことが課題として出されました。こうした文献を読み進める中で、大学が直面している問題について新たに学ぶとともに、コロナ禍に置かれている自分の現状について改めて考えさせられました。 フォーラムが始まる前にDiscord(チャットアプリ)というプラットフォームを使い、カナダの学生との交流を図りました。私のグループ内では皆がより使い慣れたLineを使いながら会話を進めていきました。フォーラムが始まる前までに自分たちのグループが発表する内容を決める必要がありましたが、皆が積極的に意見を出したため「コロナ禍が浮き彫りにしたデジタル格差と教育格差」にスムーズに決めることができました。

1週間のフォーラム ―プレゼン準備から発表まで―

プレゼン準備

全体でのミーティングは日本時間の午前中にZoomで行われました。時差の関係で時間の制約もあり、毎回のミーティングは約2時間半くらいでした。1週間以内に発表するテーマを決め、発表の準備を終わらせる必要があったため、限られた時間の中でどれだけ効率よく意見をまとめるかがカギとなりました。グループのメンバーたちとディスカッションを進めるにつれ、コロナ禍が浮き彫りにした格差社会の広がりや人種差別の問題、更には所得格差やデジタル格差が教育格差を広げている現状について改めて学ぶことができました。また、こうした問題はお互いの共通認識だったため、国際的な問題の一つになっているということも実感しました。休憩時には、実際に私たちが感じた格差や差別、また、国の体制や文化の違いによって生じる問題について話し合うことができました。更に、お互いの国のワクチン供給の状況、ロックダウンなどのコロナ対策やPCR検査の現状についても意見を出し合いました。日本では政治などに関する話をすることは控えることが多いですが、カナダの学生とはお互いの国における政策や社会の実情について忌憚のない意見を交換し、理解と共感を深めることができたため、自分の考えを持つことの大切さを再確認することができました。

発表

プレゼンテーションでは、多くのグループがコロナ禍におけるリモート教育の利点と欠点、また、今後の課題について発表していました。グループによっては自分たちでアンケートを収集しその結果をもとに対面授業またはオンライン授業の利点や欠点について発表したり、オンライン授業やハイブリッド授業(オンラインと対面授業の両方を取り入れること)を継続するためにはどのような支援が必要なのか、どのような点が懸念されるのかについて発表したりしていました。具体的にはオンライン授業では自習や勉強以外に専念する時間が増えるといった長所がある一方、健康が損なわれやすくなったり人とのつながりが希薄になりやすいということについて説明していました。私たちのグループはアンケート調査を基に、リモート教育の問題について、特に家庭によっては十分なネットワーク環境を整備できないために授業に集中して取り組めない学生が多く、大半の学生は対面授業に戻ることを望んでいることなどについて発表しました。また、コロナ禍によって収入が減っている学生たちが、授業料を払うことに大きな負担を感じている実情について報告しました。短い準備期間でしたが、自分たちで収集したデータや公式データを基に現状分析を行い、解決手段を模索する各グループの取り組みにおいて、この問題に真剣に向き合おうとしている様子を感じ取ることができました。

グループプレゼンスライド表紙

フォーラム後

今年は恒例の観光をすることができなかったため、フォーラム後に日にちを設定し、有志によるオンラインでの集いとなりました。グループの枠を超えて全員で話せる機会がほとんどなかったため、お互いの国や文化をより深く知ることができる貴重な機会となりました。例えば、若者が使う流行語を教えあったり、興味ある日本文化について話すなど楽しいひと時を過ごすことができました。

フォーラムを終えて

このフォーラムを終えて、改めてコロナは私たちに何かを気づかせようとしているのではないかと感じました。稀にないこのような時だからこそ原点に立ち返り、普段置き去りにされている現代社会が抱える様々な問題に目を向け、それを解決する努力をするべきではないのかと思いました。私たちは今、持続可能な開発目標(SDGs)に取り組んでいます。具体的には、2030年までに地球温暖化対策を徹底し、貧困をなくし、質の高い教育を普及させ、ジェンダー間の平等を実現するなどの目標を掲げています。コロナ禍は、SDGsの目標を達成するための道筋をより明確にしてくれているのではないのでしょうか。コロナにより多くの命が失われ、企業の業績も悪化しています。しかし、コロナ禍が私たちの日常を「当たり前」ではなくしたからこそ、改めて命の尊さに気づいたり、国を超えて人と交流し、その国の文化を体験することがどれだけ貴重なことだったのかということを実感させてくれた気がします。

最後に

日加学生フォーラム2021をとおして、異なる国籍、文化を持つ人たちとコロナ禍についての考えを共有し、何よりも素晴らしい人間関係を築くことができました。リーダーシップ賞をいただけたことも、私にとって良い励みとなりました。リーダーシップ賞は参加者全員からの投票で決められましたが、お互いに助け合いながら作業を進めてきた中での思いがけない受賞に、グループのメンバーから素敵な贈り物をいただいたようで本当に嬉しく思っています。このフォーラムで築いた関係が、これからもずっと続くことを願っています。このフォーラムを開催するにあたり携わって下さったすべての方にお礼の意を表します。本当にありがとうございました。