国際交流プログラム

川内 美緒 (2019年度参加)

 川内 美緒 さん(法学部 4年)

2019年度日本・カナダ学生フォーラムに参加して

事前課題でどこまで落とし込めるか

 1カ月ほど前に800字ほどの事前課題が出されました。今回の大きなテーマは、「21世紀のエネルギー政策」でした。事前課題は3つ大きな設問があり、今後の多様なエネルギーをどう使っていくか、自分が今のエネルギー源をどう評価するかというものです。答えが明確にあるわけではなく、考えた理由や根拠をもとに自分の考えを述べる課題であり、1週間のプログラムにつながるようにできていたと思います。プログラム実施直前に6班ある中で、3班ずつカナダ側の提案をするか、日本側の提案を行うか分けられ、最終プレゼンの立場が決定しました。 

1週間は長いようでとても短い

カナダ側の子たちがトロントから福岡に来る途中、トランジットできず次の日に合流することになり、1日遅れたスタートとなりました。1日目は自己紹介とグループワークを少し行い、2日目、3日目の午前中に2コマずつ講義があります。事前課題を行っていても、グループワークの中で文献を探したり、ディスカッション、講義を聞いたりすると自分の考えが変わります。また、私の班はカナダ側のエネルギー政策提言であったため、特にカナダ人メンバーから教わる事が多かったです。

 特に大変だったことは、英語文献をネイティブの子たちと同じスピードで探さなければならなかったことです。2018年にイギリスに留学をした経験があったのですが、その際はグループワークよりも自分で文献を探し、レポート作成の為に時間をかけて読み進めていました。しかし、今回のプログラムは「調査→パワポ作り→発表原稿作り→練習」を1週間弱で行います。その為、調査段階でプレゼンテーションに必要な資料、証拠を素早く様々なサイトから探す必要がありました。言語の壁を感じる暇もなく、何十件も探していく中で、私たちの班に一番必要な根拠となる資料を見つけ出すことが一番難航した部分でした。

 また、重要だと感じたことは、イメージで物事を判断しないという事です。例えば、日本において2011年に福島の原子力発電所の事故が起こり、原発=危険なモノというイメージが日本人にはついてしまいました。また、日本に限らずよく聞く話として、発電所を作る際に住民移転の問題や、騒音による近隣住民からの苦情が問題となることです。私もこのようなイメージを少なからず持っていましたが、実際に発電所を訪れてみると、施設のほとんどは地下に建設されていて、周辺に住んでいる方は発電所が近くにあるのがわからないことが多いことから、あまり大きな問題にはならないそうです。一方で、東日本と西日本では電力の周波数が異なるため、震災が起こった際も西日本から東北まで電気を送る事が出来なかった問題があったことなど、新たな発見がありました。カナダは、州によって使っている電力の違い、気温、今後の潜在的な電力源など特徴が全く異なります。そのため、カナダ=この電気を使うべきだ!というのはとても無理がありました。一つ一つの州にどのような特徴があり、それに合った発電方法は何なのか見極めるには、イメージで語らずしっかりとしたエビデンスをもって臨むことが重要だと感じました。

メリハリをつける事と、新しい発見

 私たちの班は、他の班の皆と行動する時間より班4人で行動することが多かったです。多い日には一日にグループワークを7時間から8時間ほど行い、その合間に福岡の観光、食事を行いました。ワーク中は雑談せず、食事中にお互いの国の文化や家族のこと、将来どのような仕事に就きたいかなどプライベートの話をたくさんしました。特に印象的だったことは、日本人にとって当たり前な光景でも、カナダ人メンバーにとっては違うということです。自分とは異なる国籍の方と一緒に生活することで、自分一人では分からなかった発見や景色を見させてもらえることが嬉しかったです。

 プレゼンテーションの日は、みんなから緊張感と高揚感が伺えました。しかし、一番驚いたことは、プレゼンテーションの前には別の班であっても応援し合い、良かった点を互いに言い合っていたことです。私は学生生活の中で様々なプレゼンテーションを行ってきましたが、フィードバックを貰う際も厳しい言葉や改善点、質問などを受けるだけでした。しかし、このプログラムでは違ったように感じます。当日は、身体を使って分かりやすくプレゼンをしている班や、1つの主張を簡潔に主張している班、質問にしっかり根拠を示して答えている班など様々いました。プレゼンが始まる前も、緊張から無意識に顔が強張ってしまいましたが、何人もの友人が声をかけてくれ、良い緊張感を保ちつつも、リラックスしてプレゼンに臨む事が出来ました。

「文化交流」ではなく大きな「学びと成長」のきっかけをくれる一週間

 一番このプログラムに参加してよかったと思う点は、ただの文化交流では終わらないという事です。初めは高度なテーマ内容とディスカッションの難しさに、打ちのめされそうになることもありました。しかし、1週間が終わってみると、大切な仲間とプレゼンをやり遂げた達成感、他国のエネルギー問題や特徴の知識が残っていました。そして、一番感じたのは自分がいかに勉強不足であるか、関心を知識に変えられていないかという事です。大学で自分の勉強した分野しか分からず、いくつも引き出しを持っていないことに気付かされました。一方で私の班のメンバーは、各々の学部の知識に加えて、経済の事や国内の政治について様々な事を知っていました。私はこの4月から社会人になりますが、もしこのプログラムに参加するか迷っている方がいたら、学年問わず挑戦してほしいと思います。大切なのは、外からの刺激をたくさん受け、自分の知識、経験もとに様々な場所でアウトプットしていく事、外から受けた刺激から自分の行動を変化させること、だと思います。このプログラムは私にとって学生生活最後の思い出となり、自分の勉強不足に気づくことができたため、今後の活動の大きな原動力にして社会人1年目を迎えたいと思います。