Impact Beyond Campus
日本にいるだけでは見えてこなかった多様な視点のあり方
社会学部社会政策科学科
井上 あすか


ERPのクラスで変わった、英語への認識
2020年、コロナ禍でキャンパスに行くことが叶わなかった大学一年生の時期を、私はやり切れない思いで過ごしました。何か一つでいい、大学生になって新しいことを始めてみたいという思いで見つけたのが、ERPのクラスでした。もともと、英語が一番苦手だった私にとって、英語が主体のクラスを取るのは大きなチャレンジでしたが、その時は、出来なくてもいいから新しいことをやってみよう、という思いでした。
そのERPのクラスの受講が、私にとって大きな転換点となったと思っています。それは、自分にとっての英語が、「勉強するもの」という認識から、誰かとコミュニケーションを取るための「ツール」という認識に変わったからです。元から人とコミュニケーションを取るのが好きだった自分は、英語を話せるということで、これまでコミュニケーションを取れてこなかった海外の人とも話すことができるようになることに、大きな魅力を感じるようになりました。

大学生活の集大成として、辿り着いたアメリカ留学
大学で、食についての社会課題に興味を持つようになった私は、「地域と学生を食でつなげる」というコンセプトのもと、多摩キャンパスのフードシステムの改革を始めました。こうした活動をきっかけに、生産者への理解をより深めるために地方の農業研修に行ったり、食関連の企業でのインターンを経験したりして、実践的な学びを多く得ました。その上で、日本の農業の産業構造がビジネス的な観点から見てサステナブルではないことに危機感を持つようになりました。3年間、大学内外で学び続けた私は、大学生活の最後の年で、アグリビジネスにおいて日本よりも大きな市場をもつアメリカでその仕組みを学びたいと考え、農業が盛んな地域にある、ミネソタ州立大学マンケート校への留学を決意しました。
留学テーマは、「アグリビジネス×フードイノベーション」。留学中は、大学のクラスで教わることだけではなく、実際にビジネスがどのように動いているのかを学ぶために、学外のカンファレンスに参加し、企業、行政政府からレクチャーを受けるために積極的に行動しました。特に印象的だったのは、アメリカの農務省、USDAと学生とのスペシャルセッションに参加した際に、農務長官から直々にレクチャーを受けることができたことです。
「応援されやすい人になる」
奨学金が必要だった私は、文科省が行う奨学金プログラム、トビタテ!留学Japanにエントリーし、その15期生として留学に行くことができました。このトビタテの選考、さらに合格後の研修を通して、留学目的をより明確にすることの重要性を学び、留学中にそれを改めて実感しました。
留学中は慣れない環境を、慣れない言語で生きていく必要があります。だからこそ、現地でより多くのチャンスを手に入れるためには、現地の人たちからの応援が不可欠です。そんな時、必要になってくるのは、自分は何のために留学に来て、どんな機会が欲しいのかを、現地の人にきちんと伝えられること。そしてそれは、トビタテを通して自分の留学を応援してもらうために、留学目的を磨き、きちんと伝えるプロセスと同じだということに気がつきました。そもそも自分が留学に行けたのも、大学の先生や職員の皆さん、そして家族や友人たちにたくさんの応援をしてもらえたからです。チャンスを掴むためには、誰かに声をかけてもらうのを受動的に待っているだけではなく、自分から情報を発信し、意識的に「応援をされやすい人」になることが大切だと学びました。

日本にいるだけでは見えてこなかった多様な視点のあり方
わたしは今後も、アグリビジネスとの関わり合いの中で、将来により良いフードシステムの選択肢を作ることに携わっていたいと考えています。日本と海外、地方と都市、フードシステムの抱える課題にはいろいろな規模感があり、とても複雑です。だからこそ、何か一つの正解の型を押し付けるのではなく、まずは社会に選択肢を増やすことが大切だと考えています。アメリカ留学での実践的な学びは、多様な視点のあり方を考える、貴重な機会をもたらしてくれました。