Impact Beyond Campus
越境が私をつくり、摩擦が創造性を生んだ
グローバル教養学部・グローバル教養学科
伊藤 大輔
本稿の冒頭にあたり、これまで私を支え育ててくれた家族、そして多くの学びと可能性を引き出してくださった先生方・メンターの皆様に深く感謝申し上げます。さらに、共に悩み、挑戦を支え合ってきた友人たちの存在があったからこそ、私は今日までこのような生き方を選び、挑戦を重ねることができました。
私は幼い頃から、気づけば世界に向いていた。
通っていた高校では、海外大学進学や留学を選ぶ同級生が多く国際志向が強かった。
その環境で私は、当たり前のように外国人留学生と話し、彼らに日本語を教える機会も自然と生まれた。
初めて相手が「わかった!」と笑顔になった日のことは、今も忘れない。
人が学びによって変わる瞬間に立ち会えたことが、私の越境の原点だった。
GISで体験した「摩擦から生まれる創造性」
法政大学グローバル教養学部(GIS)に進学した理由は明確だ。
世界を前提にキャリアをつくるための場所だと直感したから。
GISの授業はすべて英語。
隣に座る学生はフランス、ウクライナ、アメリカ、韓国…国籍の境界線が溶けていく。
ある授業で、気候変動とビジネスの関係について討論した時のことが鮮明だ。
私が「企業には社会的責任があるべきだ」と主張したとき、ある国の同級生が強く反論した。
「市場が求めれば企業は変わる。倫理ではなくインセンティブだ」と。
当時の私は悔しさと違和感を抱えたが、議論の後、彼と1時間以上話し込んだ。
彼の背景、私の価値観、文化の違い。
すれ違いの理由を深掘りした先に生まれたのは、
「摩擦は衝突ではなく、思考の限界を広げる起爆剤だ」 という新しい気づきだった。
これが、私の多様性の捉え方を180度変えた。


HUBSで生まれた「他者を通して自分を知る」という学び
1年生から参加している Hosei University Buddy System(HUBS)で、特に印象に残っているのが ドイツから来た交換留学生・ジェイコブだ。
ジェイコブは、誰よりも日本をよく知っていた。
「私は日本人なのに、彼のほうがよほど日本文化を深く理解している。」
恥ずかしさに近い感情が胸に刺さった。
自国のことを知らないまま、ただ「海外に出たい」と言っている自分がとても表面的に思えた。
彼と対話を重ねるうちに、私は気づいた。
「文化を学ぶ」という行為は、自分を知るプロセスでもある。
そして、他者を通してしか見えない「自分の輪郭」がある。
ジェイコブはドイツに帰国した今でも連絡をくれる。
ただの国際交流ではなく、私の価値観を揺さぶり、「自国を知る必要性」を突きつけた存在だった。
LSC:私の存在意義を見つけた場所
LinkedIn Student Club Japan(LSC)は、「学生が主体となってキャリアの可能性を広げる」という理念のもと、 全国から集まった大学生がLinkedInを活用しながら学び合うコミュニティである。
私は2025年1月より、3期生として LSC に参加し、ビジネスパーソン・企業・大学・学生をつなぐ国内最大規模のキャリアイベントLinkedIn Student Career Week 2025(3200名参加) を運営するチームに加わった。
LSCの活動は、単なるキャリアイベントの企画・運営ではない。
私が魅力を感じたのは、「学生が社会に価値を返す主体となれる、非常に実践的なプラットフォーム」である点である。
背景には、LinkedIn Japanの社員をはじめとする方々が学生にキャリアリテラシーやプロフェッショナルの考え方を伝えようと真剣に向き合ってくださる文化がある。
また、メンバー自身も「学生が学生のキャリアを支える」という意識を強く持ち、互いにフィードバックし合いながら成長を加速させていく独自の雰囲気があった。
私はその中で、運営全体を支える PMO(Project Management Office) を担当した。
100名を超えるメンバーが所属する組織の中で、各チームの進捗管理、タスクの可視化、情報共有の効率化、KPI設計など、プロジェクトの品質を担保する基盤づくりを担った。
週に何度もメンバーと面談をし、遅れているタスクがあれば一緒に原因を整理し、必要があれば役割調整や運営体制の再設計を行うなど、「プロジェクト全体の循環を良くするための裏方」として多くの判断を求められた。
特に難しかったのは、全国のメンバーがオンラインで参加する組織を一つの方向にまとめることだ。
大学も価値観も忙しさも違う中で、「どうすればメンバー全員が主体的に動ける環境をつくれるか」を常に考え、コミュニケーションの取り方や会議の設計にも工夫を重ねた。
結果として、イベント当日は 3200名以上の学生が参加し、多くの企業や大学関係者から「学生がここまでの規模をつくれるのか」と驚きの声をいただいた。
LSCは単なる課外活動ではなく、私の価値観・キャリア観・リーダーシップ観を決定的に形づくった場所だ。
人と組織の成長を支えたいという思いも、この経験を通じてより明確になった。
Baylor Universityへ——越境の次のステージへ
LSCでのプロジェクトマネジメント経験を通じて、私は自分自身に問いかけるようになった。
「もっと大きな組織で、より複雑な課題に向き合い、人の成長を支える存在になれるのか?」
その問いに対する答えを探す中で、次の挑戦の舞台として浮かび上がったのが、アメリカ・テキサス州にある Baylor University だった。
初めて大学のカリキュラムを調べたとき、私は驚いた。
Project Management 専門科目には、全米共通資格 CAPM及びPMP の体系に沿った実践的内容が並び、「管理」ではなく「人を動かすマネジメント」を深く学べる構造になっていたからだ。
さらに Baylorの経営学部であるHankamer School of Business では、国際企業のケースを用い、文化的背景の異なる学生同士が徹底的に議論を重ねる、そんな授業がとても多い。
これまで GIS や LSC で磨いてきた多様性理解が、さらに鍛えられると確信した。
しかし、私を最も惹きつけたのは Baylor の人に向き合う教育姿勢 だった。
Consulting Group in Baylor に参加すれば、KPMG や BCG の現役コンサルタントから直接フィードバックを受け、地域企業の課題解決プロジェクトに携わることができる。
「学生を企業レベルの実践へ送り出す文化」が、大学全体に根づいているのだ。
さらに私は、Baylor のキャリアセンターで採用補佐(Talent Recruitment Support)として
実務経験を積む機会を得た。学生の応募状況管理、イベント企画補佐、企業担当者との調整など、まさに 人と組織をつなぐ仕事 の現場 に立ち会う日々だった。




では、なぜ「テキサス」なのか。
アメリカの中でも、テキサスは特別だ。
エネルギー、航空、農業、テクノロジー、教育。巨大な産業が共存するこの州は、
「社会課題の縮図」 のような場所だと第六感で気づいた。
都市には世界中から人が集まり、田園地帯に足を伸ばせば地域コミュニティが持つ独自の文化や価値観が息づいている。
多様性が一気に混ざり合うニューヨークとも、歴史と政治が複雑に絡むワシントンとも違う、「多様性とローカルのリアルが交差する場所」。
私はここに、「グローバルな視点で社会課題を理解し、ローカルに根ざした変革を起こす」という、自分が仕事で実現したい未来の縮図を見た。
また、多くの日本企業がテキサスに多数進出していることも、将来、組織開発に携わりたいという私のキャリアと重なる。
ここでの学びは、間違いなく私の未来と接続するとわかった。
越境は、景色を変えるだけではない。自分の可能性を拡張する。
LSCで仲間と共に汗をかき、議論し、イベントを創り上げた経験があったからこそ、私はBaylorで学ぶ意味を明確に掴むことができた。
多様性に向き合う姿勢、組織を動かすマネジメント、人と企業をつなげる役割、社会課題に挑む視点。
そのすべてを、私はテキサスでさらに深めたいと思った。
越境は、ただ場所を変えることではない。
自分の内側に新しい視点を宿し、未来の地図を書き換えることだ。
10年後の私は、こうありたい。
人と組織の可能性を引き出し、社会課題を解決に導くコンサルタントとして、企業や自治体の変革に伴走する存在でありたい。
特に、教育・組織開発・テクノロジーが重なる領域で、未来の働き方やキャリアのあり方を設計する仕事を担っていたい。
プロジェクトの課題を解決するだけではなく、関わる人々が自分の成長を実感できるような「学びのある改善」を生み出すこと。
それが、私が10年後に実現したいプロフェッショナリズムである。
そして20年後の私は、こうありたい。
若者が自分の可能性を信じ、世界に挑戦できるような教育DXやキャリア支援のプラットフォームをつくりたい。
それは、私がこれまでの人生で支えられてきた「越境の経験」を、次の世代へ手渡す仕組みでもある。
その構想のひとつが Project Compass だ。
「人生の方向を示す羅針盤をすべての若者に」という思いから始まったこの構想を、いつか実際の教育機関や学びの場として形にしたい。
国内外の学生が集まり、多様性が創造性へと転換される場をつくる。
それが私の長期的な夢だ。
越境が私をつくり、摩擦が私を強くし、人が私を動かしてきた。
その連続が、今の私を形づくっている。
そしてこれからも私は、世界の境界線を越えながら、
人と組織の成長に寄り添い、未来に新しい道を開いていきたい。