体験インタビュー

非公開: 2012年度春期国際ボランティア・インターンシップ活動報告 阿由葉 健人
大切なのは、「会話」ではなく
「意志を伝えること」だと思う。
カナダ
バンクーバー
阿由葉 健人
2012年度 国際文化学部 国際文化学科 卒業

活動報告

【活動内容】
派遣先:カナダ バンクーバー Parkwood Daycare, Shaughnessy Daycare
私はカナダのバンクーバーに2013年2月3日から2月27日まで滞在しました。現地スタッフさんの計らいで、2つのデイケアを体験してきました。1つはParkwood Daycare 2つ目はShaughnessy Daycareで働かせていただきました。それぞれ特徴があり、Parkwoodは中国人のオーナーさんが自分の子供を自分の手で育て上げたいという思いから、立ち上げた小さなデイケアです。13人という小規模ながら子供、親、先生とかなり密な連携が取れているように感じました。中には、日本人とスペイン人の子、インド人と韓国人の子など、小さいながら、3ヶ国語を話す子供もいて、こんな小さなコミュニティもいろいろな人の思いが折り重なって、紡がれているのだなあと感心しました。
Shaughnessyはバンクーバーの韓国の方が支援している教会で、中国人や韓国人が大半を占めていました。人数はかなり多く、子供同士自由奔放に遊ぶというパワフルな場でした。ホームステイ先の家族はコロンビア人の方で、ラテン独特の雰囲気と言いますか、とても陽気で夜にはギターを一緒に弾いたりもしました。母国語のスペイン語も沢山教わりました。このように、バンクーバーは私たちが想像するようないわゆるカナダ人だけでなく、日常のどこかで他文化を共有している人たちと過ごす機会が必ずあります。いろいろな価値と触れ合って、その中で自分がどうあるかを見出す場としてはうってつけだと感じました。

【特筆すべきエピソード】
私は、英語の教員になるにあたり、原体験としてネイティブの教育現場とかかわりたいという考えのもとやってきました。2つのデイケアでは、日本のように上から規則で押しつけるという事はせず、自由であり、Why?を通じて自ら考えさせるということが軸となっていました。
Parkwoodのチーフ、デビーに聞いたところ、「文化が入り交るバンクーバーでは、1つの決まった考えが支配することはない。共通のコードがないならば、いかに共存共栄していくか。意思を交換することでのみ、お互いの理解が生まれ、お互いの理解が生まれるから、共存していくことができる。そのような社会を目指すからこそ、子供たちを自由にさせ自ら考え、行動していく場をつくっていくことに私たちは徹する。」と言っていました。なるほど、いろいろな人がいるから、英語がそのかすがいになり、コミュニケーションのために英語が必要に迫られているという印象を受けていたのに合点がいきました。
小さな子供同士で問題は起こる、おもちゃを取れた、飲み物を飲まれた…etc. それらをやめてほしい或いは先生に言いたい。こういった場では、その子が一番得意とする言語ではなく、英語が共通のコードとして、お互いの合意のために必要に迫られる。Shaugnessyのチーフのドリスは4ヶ国語話せて、子供が何を言っているのかは当然わかる。しかしあえて、それに耳を傾けない。英語で訴える、最低でも、Yes/Noを応える事を待つというのです。バンクーバーでは英語は死活問題であるのだと子供社会を通じて感じました。

【苦労したこと】
 「なぜ、ここに来たの?」やはり私にももちろんWhyを聞かれる。カナダではECEという幼児教員の資格がある。この2つのデイケアもその実習先としてあり、その取得のために来ている人たちから聞かれることだ。私は教員になるという目標を持ってきたが、大学一年生でこの質問を投げかけられたらどう答えるのだろうと思った。ボランティア、インターンってなんかかっこいいから…。そんな受動的な答えが思いつく。そのような気持ちでこの3週間を過ごしていたら、この街の活気、アグレッシブさに気負いされ、あっという間に過ごしてしまうのだろうかと思った。
なんで?なんで?多文化社会に生きるためには、自分の行動に理由を求めることが必要だ。それは、それをすることで自分にどんな利益を得るのか。その利益を通して、どうありたいのか。文化という一つの大きなアイデンティティが社会的に均一化されたとき、個人としてどう生きていくのかということが問われるのは当然なのではないかと感じた。

【今回の経験を経て感じる「グローバル人材」像とは】
Why? という思考、他者とのコミュニケーションを通して、自分の在り方を確立していく。確立する中で、得た利益を社会に還元していくことができる人を私はグローバルな人材だと考える。グローバル人材と言われると英語が得意な人だと思っていた。しかし、大切なのは、「会話」ではなく「意思を伝えること」だと思う。私は~から来ました。~歳です。紋切り型の「会話」も確かに重要だが、このような自分を説明する会話は3分ともたない。相手への関心の意思、自分がしていきたいことの意思などを交換してこそお互いにとって有意義なコミュニケーションとなるのではないか。私は英語が得意ではないし、ましてや流暢でもない。しかし、こうなる!というビジョンがあったから、みんなが助けてくれたし、自分も積極的に動いていけた。Why? という思考から、考え方や意思を磨き、それをもとに他者とのコミュニケーションを積極的に行い、自分の持っている価値と相手の持っている価値を反応させる。それは答えが一つに定まった方程式ではなく、化学反応のように多種多様であるように。そして、自分が得た価値を社会に還元する。というのも、人とつながれる場があってこそ今の自分があるわけで、その事に対する感謝と自らが社会という糸を紡ぐ一員となる自覚をもって行動していける人だと考えます。

【後輩へのメッセージ】
この派遣プログラムはあなたを必ず成長させます。1か月程度という短い期間、どう考え、どう行動するか。私にとって、バンクーバーは刺激的な毎日となりました。私のモットーは「人任せなどバカラシイ、この世は知れば知るほどスバラシイ」です。良い意味で自己中にこの機会をものにしてみてください。世界が広がりますよ。