体験インタビュー

非公開: 2012年度春期国際ボランティア・インターンシップ活動報告 仲尾 望
人としてどう感じ、どう行動するか。
広い視野で自分を客観視できるようになりました。
中国
広州
仲尾 望
2012年度 国際文化学部 国際文化学科 卒業

活動報告

(1)活動内容(派遣先、派遣期間を含む)
派遣先:中国広州市、JTB広州
派遣期間:2013年2月3日から23日(9日から15日は旧正月のため休み)
研修内容:
通常研修ではほぼ毎日法人営業、個人営業、手配をそれぞれ司る業務課の課長、そして支店長から実際の業務内容やこれからのビジョンなどについてお話しをしました。私はインターンの事前準備として旅行業に関する学術書などには目を通してきたのですが、やはり現場で働く方々との交流から得られる情報は新鮮さがありました。
実務研修では個人旅行を担当する部署のデスクを与えていただき、OJTの形式で広報、接客、その他先輩方の業務補助を行いました。広報業務ではホームページ上ツアー商品の掲載や、公式ブログ上で中国の魅力を紹介するなど情報発信を主に行います。インターンではこの実務研修をベースに、通常研修や法人営業の同行、ガイド研修などに取り組んで参りました。

(2)特筆すべきエピソード
ガイド研修があり、JTB広州の専属のガイドさんと一緒に実際のコースを回りました。実はガイドさんは日本語ペラペラなのですが、勿論中国語での研修です。「訪問地の文化や歴史の説明を十分に理解できるかどうかは、旅の喜びを左右する大きな要素」と言われていますが、その実践としてのガイド業務の研修は非常に興味深いものでした。
ガイド研修を受ける前に、個人旅行課の研修で広州における日本人ツアーガイドの変遷と現状の講習がありました。その中で、中国人ガイドと日本人旅行客のコミュニケーションにおいて、旅行客からのクレームは「文化の差」に起因するケースも多々あることを知りました。日本人観光客から「買うつもりがないものを強引に買わされた」というクレームが入ることもあるようですが、これは「曖昧な表現を好む日本人」と「ハッキリした表現を好む中国人」との「文化の差」が引き起こすトラブルの一例であるようです。このような事態を避けるために、日本人客を「おもてなし」するためのマナー、業務知識、政治や経済知識、その他注意すべきことなどをガイド内で共有できるような勉強会などを実施しているようです。もしこの研修を経てもクレームが来るようならば、それは「文化の差」では済まされない本人の責任である勉強しました。つまり、「文化の差」自体は大きな問題ではなく、それを理解し尊重しないことが問題なのです。
上のように、日中文化間には明らかなギャップがあるようですが、似ている点や共通している点も多く存在しています。ガイドの劉さんは日本に数年住んでいたことがあるのですが、その経験がガイド経験に一番役に立ったと話していました。象徴的な事例を挙げると、広州のシンボルである中山記念堂を案内する際は、「ここは日本の武道館のような場所です。かつて山口百恵や西城秀樹もここのステージに立ち、人気を博していましたよ」と説明を加えるのだそうです。この説明を聞けば中山記念堂がどういうものなのかすぐに分かりますし、日中文化交流の歴史にも関心を持つきっかけとなります。その他にも例えば三国志の話題などは日本人も中国人も親しみを持つ人が多いため、移動時間などは好きな武将の話で盛り上がる、といったエピソードも教えてくださいました。
日本と中国は両国が「共感できる」文化や歴史がたくさんあります。この「共感」が更なる相互理解を深めるきっかけとなるのではないかと思いました。

(3)苦労したこと
 中国で生活すること自体は、これまでの留学の経験のおかげで全く問題なく過ごすことができました。そうは言ってもやはり広東語はまったく聞き取れませんが、ほとんどの人は北京語も話せるためこれも問題ありませんでした。しかし日常生活に問題なくとも、業務上の中国語運用には大変苦労しました。特に私の配属先は日本語が堪能なスタッフが揃っていたので、はじめのうちはつい日本語に頼ってしまうこともありました。しかし「これではいかん!」と思い、それ以降は業務に直接関連は無くとも積極的に北京語で話しかけるようにしました。旅行業務の話は専門用語も多いためさっぱり分からないことだらけだったので、「これの意味はなんですか?」「FAXの使い方教えてください!」といったコミュニケーションからスタートしました。(2)で挙げたように、ガイドは「お客様」である日本人旅行客の文化に合わせた行動が要請されますが、職場ではみな立場が同じ「仲間」であるため互いを尊重しあうことが大切です。何度も中国語でのコミュニケーションを重ね、信頼関係を築いていくことができました。
 もうひとつ苦労したことは、「同化しすぎないこと」です。私がインターン中一番驚いた事は、職場であまり挨拶がされないことです。私はこれまでの部活動やアルバイトでは全体に向かって大きな声で「おはようございます!」や「お疲れさまでした!」の声かけをしてきたので「これが働く常識だ」と考えていましたが、どうやら中国では必須ではないようです。はじめの頃は挨拶をしても期待するような返事も帰ってこず、職場の方々を驚かせているだけだったので、正直「中国の風習でないならやめてしまおうか」と思うこともありました。しかし「挨拶」こそコミュニケーションの始めの一歩であると考えた私は、諦めることなく「早上!(おはようございます!)」「拜拜!(さよなら!)」を継続しました。直接「返事を返して欲しい」と交渉したわけではありませんが、私の想いが伝わったのか、徐々に皆が返事を返してくれるようになりました。時間が経つとは向こうからも積極的に笑顔で挨拶してくれるようになり、職場も何となく明るくなったと思います(自分で言うことではありませんが)。OJTで指導してくれている上司も「仲尾が来てからオフィスの雰囲気が良くなった」と評価してくれました。  オフィスの多文化化には苦労も大変多いですが、互いを尊重し合うことで自分や相手、そして環境も良い方向に変わっていくのだと実感しました。